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認定事業所の声

株式会社カスミ
フードスクエアカスミ友部店

茨城県笠間市/2022年11月認定

地域の方々を見守る役割もある
スーパーマーケット
自分のあたりまえが
相手のあたりまえではない
という意識をもった接客が重要

事業所認定に取り組もうとしたきっかけは何ですか

きっかけは茨城県と2014年2月に締結した「認知症普及啓発企業連携協定」です。
私たちのようなスーパーマーケットという業種では、その地域のあらゆるお客様に安心して買い物に来ていただける店舗づくりが大切です。そのため全社的にダイバーシティやインクルージョンを意識し、各店舗レベルではバリアフリー化に努めてきましたが、この協定締結で始まった認知症サポーター養成講座の受講まで、認知症のお客様には焦点を当てていませんでした。

「認知症サポーター養成講座」の受講状況や受講で得られたものを教えてください

研修の一環として受講を始めました。部門・店舗の責任者が集まる定例会議の中で研修を行うことによって受講者を増やし、今は正社員だけでなく、パート・アルバイトにも受講してもらっています。2022年12月現在、株式会社カスミ全体として1,236名の受講者がいます。

受講した結果、「自分のあたりまえが相手のあたりまえではない」ということを強く心がけるようになりました。例えば「車いすのお客様がいたら、しゃがんで目線を合わせてお声がけをする」というのは、認知症の方に限らずご高齢のお客様に対して普段からやっている接客ですが、目配り・気づかいのしかたが変わり、よりその方の視点に立った、よりその方のペースに合わせたコミュニケーションができるようになりました。

フードスクエアカスミ友部店は、2021年7月に売場拡張・品揃え拡大のためにリニューアルオープンしたばかりの店舗ですが、最初に開店したのは半世紀ほど前ですから昔なじみのご高齢のお客様が多いのです。とくに「自分のあたりまえが相手のあたりまえではない」という意識をもった接客が重要になる店舗だと思います。

茨城県認知症の人にやさしい取り組みとしてどのような内容を実施していますか

チェックシートに含まれる以下の項目を実施しています。

「認知症の人にやさしい対応」として
  • ゆっくりお客様のペースに合わせて対応する
  • 笑顔で優しく声かけをする
  • はっきり大きな声で話しかける
  • ていねいに説明をする
「認知症の人にやさしい事業所(店舗)づくり」として
  • 店内がバリアフリーになっている
  • 車いすでの利用ができる
  • トイレに手すりがある
  • 車いすで利用できるトイレがある
  • 休憩スペースがある
「認知症の人にやさしい商品構成など」として
  • 値札など大きな文字を使っている
  • 商品を見やすい位置に配置
  • 少量販売をしている
「認知症の人にやさしいサービス」として
  • お金の計算等支払い時のお手伝いをする
  • 自宅まで配達する
  • その他:移動スーパーの取り組み
「認知症の人を含む高齢者が交流できる場」として
  • 交流スペースがある
「行方不明認知症高齢者等への対応」として
  • 市町村からの依頼があれば探索活動に協力する

これらの項目の中には、私たちが認知症のお客様を意識しはじめる前から、接客の一環としてごく自然にやっていたことが入っています。チェックシートを記入していて、『認知症の方に』と特定されたことではなく、接客のうちのひとつとして行っていることが、認知症のお客様にとってもより良い接客になるということを感じました。

認定書記載項目「移動スーパーの取り組み」について教えてください

移動スーパーは、店舗のある各市町村との包括連携協定の下、「近所に買い物ができる店がない」「高齢などで外出が難しい」といった方々の多いエリア向けに行っている取り組みです。予定も含め現在57車両で取り組んでいて、今後さらに増やしていけたらと考えています。

トラックに商品を積み、公民館などそのエリアのお客様が集まりやすいポイントで販売するのですが、商品が買えることだけでなく、そこに集まる方々の間でコミュニケーションが生まれることでも喜んでいただいています。

お客様との印象深いエピソードがあれば教えてください

これは「行方不明認知症高齢者等への対応」とも関連すると思うのですが、あるご高齢のお客様が困った様子で立ちつくしていることにサービスカウンターの女性スタッフが気づき、店舗次長がご自宅まで送らせていただいたことがありました。スタッフはよく気づいてくれたと思いますし、昔なじみの多い、普段からお客様とのコミュニケーションがよくとれている店舗だからできたことだと思います。

スーパーマーケットには「自然に地域の方々を見守る」という役割もあるのだなあと気づかされたエピソードです。

取り組みにあたり、困難だったことや特に気を付けたことはありますか

「自分のあたりまえが相手のあたりまえではない」という意識をもった目配り・気づかいが大切なのですが、忙しい時間帯の品出しやレジのスタッフにはどうしても余裕がなくなります。ですのでフロアに立つ店長や、先に申し上げたサービスカウンターの女性スタッフなど、店舗全体を見ている人間がどの時間帯でも何人か必ずいるようにし、お客様との積極的なコミュニケーションを心がけています。

おかげさまで商品を買いに来るというよりは、スタッフの誰かに会いに来るというご高齢のお客様がたくさんいらっしゃいます。私たちのファンになってもらい、買い物よりコミュニケーションを求めて来ていただくことが、私たちの店舗には重要なのです。

これからの課題はありますか

スタッフが意識して「こうしないと」と取り組むのではなく、もっとみんなが自然に、無意識のうちにお客様と良いかかわりがもてるようになればいいなと思います。
店舗がコミュニケーションの場になることができれば、ご高齢の方の外出のきっかけにもなるのではないでしょうか。

認知症の方と限定はしないで、どなたでも安心して買い物ができる環境、ふらっと寄ってもらえる店舗の空気感をつくり、その輪を広げていきたいと考えています。

事業所認定を受けようと考えている事業者様向けにメッセージを

「認知症の人にやさしい」を実現するのは、自分独りではどうしようもありませんし、1つの会社でも大変なことです。

「認知症の人にやさしい事業所」がどんどん増えていって、社会全体に広がれば、認知症の方々だけではなく、みんながもっと安心してすごせる社会になるのではないかと思います。ですから、これから認定を受けようと考えている事業者様、ぜひ力を貸してください。

認定事業所データ

株式会社カスミ
フードスクエアカスミ友部店

住所:〒309-1704 笠間市美原1丁目1-7
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